家族

せろはんさんのエントリ
http://d.hatena.ne.jp/serohan/20061203
でちょっと思い出したのがラッセルの「幸福論」の「13章家族」の部分です。
少しだけ引用(岩波文庫より)

…私は、親としての感情を非常に高く評価するものの、よく行なわれているように、母親は自ら最大限に子どものために尽くすべきだ、という結論を引き出そうとしているのではない。この問題については、一つのしきたりがある。それは、子どもの世話については、年をとった女が若い女に伝えていた非科学的な半端な知識のほかには何一つ知られていなかった時代には、いかにも結構であった。今日では、子どもの保育には、この主題のある分野を特別に研究した人たちによってもっともうまく行なわれる部分がたくさんある。子どもの養育のうちで「教育」と呼ばれている部分に関しては、このことは認められている。母親は、どんなに子どもを愛していても、息子に微積分学を教えることを期待されない。正規の学問の習得に関するかぎりは、それを身につけていない母親よりも、身につけている人々から習得するほうがうまくいくことが認められている。しかし、子どもの保育の他の多くの分野については、このことは認められていない。そのためには経験を必要とすることが認知されていないのだ。むろん、一定の事柄は、母親のほうがうまくやれる。しかし、子どもが大きくなるにつれて、他の人がしたほうがうまくいく事柄がだんだん多くなっていくだろう。このことが一般に認められたならば、母親たちは、数々の煩わしい仕事から解放されることだろう。それは、母親たちが専門的な能力を持っていない分野だからである。何でもいい専門的な技術を身につけた女性は、たとい母親になっていても、自分自身のためにも、また地域社会のためにも、自由にこの技術を行使し続けるべきである。妊娠の後期および授乳期には、そうすることはできないかもしれない。しかし、生後9ヶ月を過ぎた幼児は、母親の専門的活動の超えがたい障害になるべきではない。社会が母親に対して子どもへの理不尽な犠牲を要求するような場合、必ず母親は、並外れて聖女的である場合は別として、彼女に期待する権利のないほどの大きな埋め合わせを子どもに期待することだろう。従来、自己犠牲的と称されている母親は、大多数の場合、わが子に対して異常に利己的である。というのは、親であることは人生の一要素として重要ではあるけれども、人生の全体であるかのように扱われるならば、不満足なものになるからである。そして、不満足な親は、とかく情緒的に貪欲な親になりがちだ。だから、母親のためにも、また同じように子どものためにも重要なことは、母親になったからといって、他のすべての関心や仕事から切り離されるようなことがあってはならない、ということだ。もしも彼女に子どもの世話をする本当の適性があり、また、わが子の世話を十分にできるだけの知識があるならば、彼女の技術は、もっと広く使われるべきである。そして、彼女は、あるグループの子どもの世話に専門的に従事すべきであり、その中に自分の子どもを含めてもさしつかえない。親たちは、国家が要求する最低の義務を果たしている以上、わが子がどのように、また(有資格者の部類に属するかぎり)だれによって面倒を見てもらうかについて、口を出すべきである。しかし、すべての母親はほかの女性にもっとうまくやれることまで自分でするべきだ、と要求するようなしきたりがあってはならない。多くの母親がそうであるように、わが子に対して当惑と無能力を感じる母親は、この仕事への適性があり、必要な訓練を受けている女性に、わが子の世話を委ねることをためらってはならない。わが子に対してなすべき正しいことを女性に教えてくれる天与の本能などあるわけがない。また、気遣いも一定の限度を越えれば、所有欲のカムフラージュになる。多くの子どもが、母親の無知で感傷的な扱いによって心理的にだめにされている。父親がわが子のために多くのことをしてやることなど当てにできないということは、昔から認められてきた。それでいて、子どもたちは、母親を愛するのとまったく同じように、父親を愛する傾向がある。…


ん?ちょっとだけじゃなくなってたw。引用しているから引用部分万歳というわけではないです。個別具体的な家庭内のしきたりの合理性は、社会的見地からの合理性によってのみ解釈されるべきだとは思われないからです。それとこのような論の前提として、社会的な費用の分担をどう考えるかというのがまず気にかかってしまいます。と、それはさておき、それ以外の部分では結構うなずけたりするんですよね。ラッセルの「幸福論」を読んだのは大学に入ってからですが、私の大学の友人は、中学や高校果ては小学校で既に読んでいたみたいです。休み時間に読んでいたら、「今頃読んでるの〜しゅーさん」とか言われちゃったりしましたw